高校卒業後、岡崎にある美容師の専門学校に進学。三河エリアの求人が多かったのと、たまたま兄も豊田市内の会社に就職していたこともあり、自然な流れで豊田にある美容室に就職しました。「いつかは自分の店を持ちたい」という夢を持ちながら本店で4年、名古屋市内の姉妹店で2年勤めたのち、28歳で独立。念願だった自分の店を豊田にオープンしました。今から6年前のことです。
豊田で開業した理由ですか？私は設楽町出身なのですが、名古屋に比べ、豊田のほうが仕事しやすい、居心地がいいなと漠然と感じていたというか、たぶん豊田の雰囲気が自分に合っていたんだと思います。それと、美容室は地域の皆さんに繰り返し通っていただく場所でもあるので、豊田だったらこれから先、お客さま一人ひとりと長くお付き合いしていけそうだなと思い、決めました。

起業ってハードルが高いイメージありますよね。私も資金面や店づくりなど、とにかく何もかも初めてのことで大変でした。店舗の物件探しや、設備や器材、シャンプーなどサロン用専売品に関する業者さんはイチから自分で開拓。店舗の設計デザインは、勤めていた店のお客さまの知り合いの方におせわになりました。「独立、決まったの？お店どうするの？店舗設計を手がけている知人がいるからよかったら紹介するからね」といって力になってくださる方がいて。職業柄、いろんな業種の方と知り合う機会が多く、仕事を通じてお客さまとのつながりを大事にしてきてよかったです。いいご縁に恵まれました。

設備や開業するための資金はいろいろ検討した結果、銀行で借りるより利息が安かったこともあり、加盟していた愛知県の美容組合から借りました。ちなみに私の感覚ですが、銀行に融資の相談をしに行った際、場所が豊田だと伝えると、比較的、前向きに検討してくれたように感じました。実際、「豊田なら大丈夫ですね」と言っていただけたところもあり、もしかして豊田って信用が厚いのかな？と。
他の自治体に比べ、豊田は人口が多い上、大手はじめ企業がたくさんあるので、就職を機に他府県から来る人が多いですよね。安定して人の流入が見込める豊田独特のこういう土地柄は、私のようなお客さま相手の事業者にとってとても魅力的で、開業もしやすいのかなと思います。

店名の『Lilac』は思い出・友情という花言葉に由来しています。ヘアメイクとコミュニケーションを通し、お客さまの思い出づくりをサポートできたらという思いを込め、名付けました。長く皆さんに愛される美容室をめざし、リゾート地、ハワイにあるような心地いいお店をコンセプトにつくったお店です。
もう一つ、設計士にリクエストしたのがバリアフリー。私の知り合いに障がいのある方がいて、車椅子の方も気軽に来ていただけるようなお店にしたいと思ったのがきっかけでした。入口にスロープを設け、バリアフリーに。店内の一角には個室も設けました。この個室にはシャンプーからカット、パーマ、仕上げまで席を移動することなく、ひと通り施術可能な設備を導入。またスタッフ全員が、「ハートフル美容師」（全日本美容業生活衛生同業組合連合会認定）という資格を持ち、高齢者や障がいのあるお客さまに、快適で満足度の高い美容サービスを提供できるよう、努めています。
ちなみにこの個室は、子育て世代のママさんたちからも好評なんですよ。「子どもが騒いでも他のお客さまに気兼ねなくカットしてもらえる」と喜ばれています。豊田には就職や転勤を機に夫婦それぞれ遠方からいらしていて、子どもを預ける親御さんや親類が近くにいない方も多く、そういった方たちにも気軽に利用してもらえたらと思います。

豊田市では中学2年生になると地域の企業や店舗などで職場体験学習を行っていて、私の店も開業して2年目でしたか、近くにある竜神中学校から職場体験協力の依頼を受け、生徒さんを受け入れています。体験は3日間ほど。掃除、洗濯から接客までひと通り美容師の仕事を体験してもらっています。美容師って華やかな職業に見えますが、実は掃除や洗濯など地味な仕事も多く、「接客以外のこういう仕事が実はとても大事なんだよ」と伝えてきました。
緊張しながらも、お客さまに気持ちよく過ごしてもらうために一生懸命接客している生徒さんたちを見て、そうだ、いい緊張感を持つのって大事だよなと。生徒さんたちの姿を通し、私自身、改めて美容師の仕事の大事な部分を見つめ直すことができ、貴重な時間でした。残念ながらコロナの関係でこの2年ほど実施されていませんが、体験学習が再開したらまた受け入れたいですね。